朝日は毎日繰り返し昇り、谷間で は鐘の音が鳴りわたる。祈りを捧 げることはキリスト教でもイスラ ム教でも変わりがない。にもかか わらず戦争は起きる。しかし祈り は無駄ではない。思いはやがて通 ずる。全音階的な『鏡』の5曲に は「鏡」の言葉から連想する左右 対称の鏡像的形式はない。だが視 覚描写的なこのピアノ組曲に触発 されて、左右対称、しかも時事問 題に関連した切り絵の小品を捧げ るのは、ラヴェルへの冒涜ではな い。彼の音楽は世界が幸福な時だ けのためのものではないからだ。