数日前、京都市内に住む高齢の伯 父が意識不明になったと電話があ り、すぐに見舞いに行った。その 伯父は40年前は声が大きく、顔 も鬼瓦のようで、密かに「鬼のお っちゃん」と呼んでいた。当時の 京の冬の夜空は大阪市内とは全く 違って見事な星が輝き、教科書で しか知らない北斗七星が無数の星 砂子の中にボタンのようにはっき りと見えた。そして赤ら顔をした 伯父の声が聞こえる家からは暖か い明かりがこぼれていた。本作を 作り終えた昨夜、伯父が亡くなっ た。今夜の通夜に星が見えるか。