30年前にロラン・バルトの『表
徴の帝国』を読んだ。そこに載っ
ていた『法志菩薩像』の写真に驚
いた。本作はその模写だが、鳥イ
ンフルエンザ被害
によって200
0万個もの卵を処分するというニ
ュースを先日知って、この像を連
想した。卵と鶏、どちらが先でも
よいが、結局卵から卵が生まれる
という根源的なことを、この像を
彫った人物はよくわかって表現し
ている。バルトは続ける。『裂け
目から覗いているものはもうひと
つの表徴だ』。そして本作の裂け
目からは『死か共生か』が覗く。