桐は五月にうす紫色の筒状の花を
咲かせるが、必ず1本だけ孤独に
堂々たる姿で立っている。伐られ
てもすぐに場所を変えて生え、一
夏で人間の背丈以上に成長する。
今年も意外なところで咲いている
のを発見し、何日か写生に出かけ
た。それを用いて切り絵を作ろう
としたところ、急に千手観音が思
い浮かんだ。そう言えば形が似て
いる。たとえ人に千本の手があっ
ても、すべての人を助けるには足
りないが、困っている人を助ける
思いは千手観音の姿だ。千手観音
さんよ、世間にひと泡吹かせろ。