今からちょうど70年前だから、 そんな大昔のことではない。ヒト ラーは政権を握り、まもなくベル リンで非ドイツ的書物の焚書を行 なった。その時ケストナーは自分 が書いた本のように、あたかも探 偵の目を持って人込みに紛れ、夜 天を焦がすその炎に自分の本も投 げ込まれる光景を観察した。その 時の荒れ狂う炎の舞いとケストナ ーの憤りの炎を思う。そんな時代 が二度と来なければいいと、今宵 もまた本を開き、炎と渦巻く著者 のあらゆる情念と、自己のそれと 化学反応させて心踊らせよう。