この1か月、新聞で3度も緑色に 光る蛍の群れの絡まった様子を撮 影した写真を見た。わが家の庭に も昔1匹だけ飛んでいたことがあ るが、蛍で最も印象的な話は洲之 内徹の『気まぐれ美術館』だ。そ こに貧しかった時代の氏の思い出 が綴られ、女と一緒に夜の闇を川 で水浴びしたところ、たくさんの 蛍が沸き立つように舞ったという 話が出て来る。今ではホタルのよ うな恋人たちは火照る体を鎮める ため、妖しい緑のライトも灯るラ ヴ・ホテルに囚われに行くのだろ うけれど、ロマンスが欠けるね。