最晩年の洲之内徹は新潟で人妻と
密会を重ねた。そのことは『気ま
ぐれ美術館』を艶のあるものにし
ている。かつて最晩年の良寛は、
40歳下でまだ30歳であった貞
心尼と3年半の間、和歌を通じて
心を通わせた。雪深い越後の地に
離れて住むふたりは春にならなけ
れば会うことはできず、そのため
なおのこと貞心尼ははやる恋心
歌に託した。とはいえふたりの情
熱はプラトニック・ラヴであった
ろう。それでも会いたい思いは子
ども好きな良寛が得意とした手毬
のようによく弾んだに違いない。