2年前の春、近くの林でレモンを 拾った。それは陽当たりのいい場 所で、木の成長にはよかったのだ ろう。先日同じ場所に行ったが、 根こそぎにされたらしく、レモン の木の代わりに銀杏の木が大きく 成長していた。レモンから銀杏へ の超現実主義的変移だが、こうし た変化が現実というものだ。思い 出が脳裏にくっきりと刻印されて いても、実際に触れられるモノの 存在はもはやない。それで初春の 昼下がりに、レモン・ティーでも 飲みながら、古い思い出話を修辞 学に花咲かせて心温め合うわけ。