ルルの物語は凄惨で、希望はどこ にも見出せない。19世紀末の1 0年を費やして完成させたヴェー デキントはなぜ『地霊』後半を『 パンドラの箱』と名づけたのか。 パンドラの箱は蓋が開けられた途 端、世の中へあらゆる悪や災いが 流れ出し、最後に小さな希望が残 ったというが、ヴェーデキントは この戯曲で希望をどう考えたのだ ろう。いずれにしても、ギリシア 神話から当時の三面記事的事件ま で関係し、深い読み解きがなされ る作品であり、あらゆる形の愛や 欲望の深淵を垣間見せてくれる。