駅の改札を出て家路に向かい始め た時、ふと前方の道を見ると、真 正面に満月が低く昇っていた。そ う言えば最近は夜空を見上げたこ とがない。月の満ち欠けがわから ないはずだ。あまりにもまん丸で 大きく、そっと両手でつかむ格好 をしてみた。そして、まともに聴 いたことがないシェーンベルクの 『月に憑かれたピエロ』のCDを 買ってみようかと思った。満月は 狂気のシンボルで、その夜には不 吉なことが起こるという。確かに そんなことを思わせるほど、ぽっ かりと夜空に輝く満月は美しい。