今年は彼岸の中日にヒガンバナを 初めて見た。それは天気のよい昼 下がり、鴨川の畔を歩いて下って いた時のことだ。緑の陰に置かれ た石のベンチにホームレスがひと り、川に背を向けて寝ころんでい た。顔は見えなかった。その代わ り、ベンチの周囲にびっしりと咲 いていたヒガンバナが強烈であっ た。まだ大半が蕾であったため、 茎の黄緑色の方が目立ったが、そ れでもあれほどたくさんまとまっ て咲いているのは初めて見た。満 開になった頃、ホームレスの心も 燃えていたならいいのだけれど。