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納入先に設えた自作屏風


活の変化も原因としてあるが、今では屏風を見る機会は結婚式でも金屏風だけと言ってよい。ましてやその屏風に絵が描いてあるとなれば、美術館でしかお目にかかれない。それでも毎年大きな美術公募展、たとえば日展には屏風作品が多く出品される。それは日本画ではなく、特に染色部門に顕著だ。そうした作品は寸法の規定があるため、ふたつ折り屏風の蝶番を全開して平らにした状態で180センチ角以内となっている。それ以上の4曲や6曲となれば、作家はもっぱら個展用に染めるが、雑誌などによる図版の紹介がない限り、その短い展示期間内でしか見ることが出来ない。これは公募展でも同じことだ。つまり、毎年ある程度の屏風作品が生まれているのに、大半は作家の所蔵となったままで陽の目を見ず、現代の屏風作品は相変わらず多くの人の知るものにはならない。屏風という調度品が現在の生活空間に不要かどうかを言えば、よほどの好事家か、あるいは大きな屋敷の居住者でない限り、ただ邪魔なものであるに過ぎない。だが、これを言えば100号を越える大きな油彩画や日本画も同じことで、ふたつ折り屏風の場合はまだ半分に折りたためるから、収納にも便利だ。それに、家具調度としての機能があるから、部屋の臨時的な仕切りにもなって使い勝手がある。そんなことを考えると、屏風はまだまだその存在を主張出来そうだ
 屏風の形や大きさに決まりはない。作家が予め台、つまり、木の桟を組んだ枠の縦横寸法を決め、表具屋に発注し、染め上がった生地を裏打ちしてその台に貼りつけてもらう。これはごく簡単に言った場合の表現で、実際は台の上に和紙の下貼りをしたり、蝶番を作ってもらったり、表具屋がすべき仕事はいろいろとある。屏風は厚みが大きいほど安定感があり、反りも少ないが、通常よりわずか2、3ミリ程度厚くするだけでも台作りの費用には大きな差が出て来る。それは昔と違って、何でも大量生産があたりまえになった今は、襖に使用する木材を転用することが多く、そうした既成素材を使用しない特注品はそれなりに高くなってしまうからだ。また、屏風はたためるという機能を有するが、それは屏風に絵を描く場合、折りたたみ箇所を全体の構図の中でどのように扱うかという、画家にとっては制限ともなる大きな条件を考慮する必要がある。だが、このたたむという行為はキモノにも共通していることであり、キモノ作家が屏風を染める場合、ある程度はそうした構図上の条件を苦にせず行なうことが出来ると思う。ただし、日展で出品される染色屏風はほぼすべてがローケツ染めや糊型染めであって、総絵羽のキモノを染めた経験のない作家が多い。筆者がここで紹介するような友禅屏風は非常に珍しい存在で、他の類例があまりないために、1点ずつを実験として染めていると言ってよい。キモノの文様との関係をあえて意識しながら、どこまで写生を活かせるかという問題を抱えたものや、キモノとは全然関係しないところで、しかし友禅技法の特長を生かした独自の作品が出来ないかと考えたものなど、各作品はそれなりに思い悩んだ結果の跡を刻印していると思う。本ホームページでの紹介は、キモノ同様に全作品ではないが、作った順に各作品を解説する。





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