●アネモネの写生を眺める小さな女の子


ネモネは風を意味するギリシア語に由来していたと思うが、10年ほど前、植物園でアネモネを写生していると、春の心地よい風に乗って、ひとりのかわいい女の子が歩み寄って来た。そして、しばしそっと静かに筆者の肩越しに写生を見つめていた。まだ幼稚園か、小学1年生であったと思うが、そのくらいの年齢の子どもが一番かわいい。若い母親がその女の子の名前を呼ぶと、女の子はさっと振り返って母親の元に走って行った。小さなバスケットを持っていたのが印象的で、その中にはきっと植物園で昼食に食べるサンドウィッチでも入っていたのであろう。その年の暮れに年賀状図案として用いたのが上のイラストだ。女の子の姿や服装はほぼ忠実に再現している。アネモネはたくさん写生したが、それらを用いて染色作品を作ったことはまだない。
 これも10年ほど前になるが、近所に住む小学1年生の女の子をとてもかわいいらしいと思った時期がある。筆者にはロリコン趣味はないが、自分には女の子どもがいないので、心の中のどこかにスイッチが入って、その当時はその女の子のことをかわいいと思った。わが家の前の道を集団登校の子どもたちが学校へ向かうが、ある日、学校帰りのその女の子を、母親に断って、サザンカの垣根の前に立たせて写真を撮らせてもらったことがある。その写真は今でも仕事部屋に飾ってあるが、女の子がその後、どう成長したかは全く知らない。同じ家に住んでいるとは思うが、きっと今見ても本人だとはわからないだろう。ここ10年ほどで別の大きな風が吹いたのか、すっかり時代が変わり、いかに顔見知りとはいえ、よその女の子に声を気軽にかけるおじさんは変な目で見られる。筆者の息子やその女の子が通った小学校の花壇にはよく写生に訪れて、校長とも顔見知りであったが、今では勝手に学校の中には入れなくなっている。『おじさんを見れば怪しいと思え』と思われているような気分がして、もう子ども、特に女の子には声をかけることはないだろう。

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