下の写真はクリックで拡大します。



(図1)水を熱してハイドロを入れる。



(図2)摂氏90度程度で生地全体を
浸す。



(図3)箸で万遍なくたぐり寄せる。



(図4)中火で煮続けて10数分
経った頃



(図5)色合いを見て、生地を上げる。



(図6)充分な水に浸してしっかりと
洗う。


●生地全体の色抜き

学染料は化学反応によって繊維に色素が染まっているから、その色を同じく化学薬品で 抜くことが出来る。ただし、その過程で繊維が脆くなる場合があることを知っておく必要 がある。特に濃く染まったものを白くしたい場合は、それだけ抜染剤を多く使用する必要 があるから、生地に負担がかかる。また、濃く染まっているものは真っ白には出来ず、中 程度の色でもうっすらと黄ばみが残る。そのため抜染した後に新たに染める時は、その黄 ばみのうえに新たに別の色を重ねることになり、黄ばみを含んだ色しか望めない。また、 抜染専門の業者があるが、通常はどんな色でもかなり白くなるまで抜いてくれるから、そ の分生地の劣化があると考えてよい。自分で色抜きをする場合は、そのあたりのことが加 減出来て、次に染め変える色のことを考慮して、そこそこ色が抜けたところで作業を停止 すればよい。だが、自分でキモノ1反分を一度に色抜きするにはかなり大きな容器が必要 だ。そのため、せいぜい4、5メートル程度の長さに分割して、ひとつずつ順に抜くこと になる。ただし、この方法では分割したもの同士で色の抜け具合が異なり、1反全体とし て色が揃わないことがよくある。つまり、色抜きはなるべくせず、新たな生地で染め直し た方が手っ取り早いし、きれいに仕上がると考えた方がよい。
 左の写真の説明を以下にするが、使用した生地は無地染めしてあったのもので、長さ4 メートルほどだ。後で張り木で干すのに便利なように、両端に乳布を縫いつけてある。

●図1。生地幅を折らずに充分にそのまま収まる大きさの長方形のホーローのバットに水を 8分程度張って、ガス・コンロの火のうえにかける。湯の量は多いに越したことはないが 、コンロの火がバット全体に万遍なく当たるようにする。ここでは2個のコンロのうえに バットを置いて両端から同程度の火力で熱している。微細な泡が出始めたところで、還元 漂白剤のハイドロを20グラム程度注ぎ、箸などでかき混ぜて、湯に均等に馴染ませる。 ハイドロはロンガリットと同じく白い粉末で、500グラムで500円程度だ。長年置く と効果がなくなるが、それは湯に粉末を入れた時、細かい泡が一気にたくさん出ようなものは抜染効果が減少している。湿気を避けて、冷暗所できっちりと 容器の蓋をして保存する。湯にハイドロを入れる場合、スプーンで取って計量 するのがよいが、色の抜け加減は目で見てわかるから、ここでは経験と勘 で適量をそのまま注いでいる。悪臭が出るので、必ず家の外か、換気扇を回しながら作業 する。また、ハイドロが目や口に入らないように、取り扱いには極力注意する。

●図2。ハイドロが均等に湯に溶けた頃を見計らって、屏風だたみにした生地をそっとバッ トの湯に浸す。コンロは中火。一気に熱して大きな泡がどんどん沸き上がり、 湯が蒸発しやすくなることは避ける。80から90度程度を保てばよい。色は生地を漬け た瞬間からじわじわと抜け始めるので、生地を引き上げるまで絶対に場所を離れないこと。

●図3は、下方にある生地をずっとそのままにせず、箸で順に送ってどの部分も同じように 抜けるようにする。この場合、湯がバットから溢れて火傷をする恐れがあるので、静かに 作業する。また、生地が湯から外になるべく出ないように、ずっと箸で押さつつ行なう。

●図4は10数分経った頃で、すでに最初の色の9割程度の濃度になっている。これ以降は 時間を費やしてもあまり変化しない。これは生地に染まっていた染料をある程度抜くため のハイドロ量を消費したためだ。もっと白く抜きたい場合は、一度生地を引き上げて、バ ットの湯を捨て、新たに水を張って沸かし、ハイドロを入れる。濃い地色を抜く時はこの 方法を3度ほど繰り返す。

●図5は、コンロの火を消して生地を別の容器に引き上げたところ。生地は元のピンク色が 少々残っているが、次に染める色はその色を含むので、真っ白にならなくてもよい。また 、生地は濡れている時は色が濃く見えるので、この写真程度ならば乾燥後は 絹本来の白と大差なく見える。バット内の湯が黄色になっているが、どのような色 を抜いても同じように黄系の色となる。この湯はすぐに捨てる。

●図6。バットから引き上げた生地をすぐにきれいな水を張った浴槽に浸す。充分に水元し 、乾燥させる。色抜きが弱くて、屏風だたみした箇所でうっすらと段々に色ムラになるこ とがままあるが、場合によってはもう一度図1から図6までの作業を繰り返してさらに色 を抜く。この場合、ハイドロの量を少なめにするのは言うまでもない。



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