●名前のこと

禅の世界に入って心機一転、名前の一字を改めて「大山甲日」と名乗った。同じ頃、漢字の成り立ちに興味があって、そうした本を1冊買った。その中に「早」の字は、意味を表わす「日」と、音を表わす「甲」が上下に合さってできた形声文字で、夜のとばりが破れて日光がさし始める意味だとあった。「夜明け」の意味から「早い」の意味に用いられるようになったという。しかし、学者によって意見は異なり、羽子板の羽根に使用する黒いむくろじの実とする説や、「匙」や「是」と関係のある仮借文字とする説もある。前者は「黒」から「夜明け」につながるはするが、後者は「夜明け」とは何の関係もない。御来光の雄大なイメージから一気にスプーンへの縮小では、あまりにロマンティックさに欠けて、ちょっと残念だ。それはさておき、「甲日」は「早」を上下逆さまにした形とみなせるから、「日没」を意味することになるとも言える。しかし、日没の後に長い暗闇が続き、そして必ず日の出がやって来る。つまり、物事の最後はそのまま最初とつながっていて、両者は同じことと考えることもできる。自分が友禅界で何をすべきか、そもそもそれは名前に暗示されていたのではないか。このトップ画面における、暗闇を歩く「黒い」男が大きな山から昇る日の出に悠然と向かっている絵にはそんな思いも込めている。