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渋 札には幅の広めのものと狭いものがある。左図で説明するものは後者だが、大きさにかかわらず、どちらも和紙に柿渋をうすく引いて強度を強めてある。そのため、水に浸し続けても容易には破れない。この三角形の尖った先端部をこより状にしっかりと撚って、その部分を紙紐として扱って生地耳に結わえつける。裏表は紙のざらつき感でわかる。つるりとしている方が表で、そこに水で消えない筆記用具で名前や電話番号、それに外注に指示すべき事柄を記入する。通常は筆と墨で書くが、油性のフェルト・ペンでもよい。要するに水や揮発油で洗っても消えないものなら何でもよい。この渋札は白生地段階で取りつけて、最後の仕立てに出す時まで通常はつけたままにしている。また紋屋や整理屋など、異なる外注に出すごとに別の指示内容を書いたものに取り換える。渋札はキモノの反物や広幅生地など、みな同じように取りつける。 ● 図1。通常は5ミリ程度ある生地耳の中央に尖ったもので小さな穴を空け、撚った渋札を、その根元までしっかりと生地表側から通す。 ● 図2。渋札先端を生地表側に回して、生地に突き刺した渋札根元の周りを1回巻いて輪を作る。 ● 図3。巻いた渋札先端部を輪の中へ下から上に向かって通す。 ● 図4。渋札先端部を強く引いて輪を閉じる。 ● 図5。完成状態。これで少々手荒に扱っても渋札は外れない。 |