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(図1)蒸し釜外観。



(図2)蒸し釜内部。



(図3)糊落とし用の水路。



(図4)水元の機械。


●整理工場:丸京染色

都市内に染色の蒸し工場が何か所あるのかは知らない。十数年前までは堀川夷川東入ルの丸石という工場に持参していたが、廃業してしまったのでその後に丸京に行くようになった。ほかにも店もたたんだところがあって、京都のキモノ生産高の激減に応じて減少している。丸京は阪急の大宮駅から歩いて5分もかからないところにあって、アクセスにはとてもつごうがよい。天気のよい日などはごくたまに嵐山から自転車で行くこともある。それでも市バスを利用して行くよりまだ早いほどで、30分強といった距離だ。なお、遠距離の人でも宅配便などを利用して仕事をしてもらうことが出来る。
 丸京は京都のうなぎの寝床と呼ばれる町家のように、間口はさほどではないが、奥行きがかなりある。名刺には「蒸し・ローケツ精洗・整理・MP加工」と書かれているため、蒸し工場や整理工場という表現は本当は適切でない。整理工場の呼称がいいとは思うが、蒸しを行なわないもあるから、本当はこれは好ましくない。一般的には丸京のような会社は「蒸し屋」「蒸し工場」と呼ばれている。 ついでながら、MP加工とは柔軟加工のひとつで、染色の工程で風合いが固くなった生地を柔らかくしてくれる。
図1は蒸し釜の外観で、ふたつ並んでいる。写真では少しわかりにくいが、家のような切り褄屋根構造になっていて、これは平らな天井であれば蒸しの最中に発生する蒸気の水滴が生地に付着しやすいので、内部の斜面を伝わらせて下に落ちるように誘導させている。図2は観音開きの扉を全開したところ。床から上方に張られた水滴付着防止の布までの高さは180センチほど。たくさんの反物や広幅の生地をぶら下げて一度に釜内部に万遍なく蒸気を当てることが出来る。
図3は工場内に設けられた、糊伏せの糊を落とすための川で、地下水を汲み上げている。友禅染は豊かな水がなければ完成しない技法であり、この人工の水流の中に人が入り、たわしを使用して柔らかくなった糊を除去する。3、40年前は鴨川や桂川といった自然の河川が使用されたが、糊が環境を汚染させるため、禁止になった。現在は一旦糊を落としてきれいになった反物を鴨川で洗う作業を観光客に見せるパフォーマンスがたまに見られる。
図4は蒸しの終わった反物や、糊やゴム、ローなどが除去された反物を最終的にきれいな水で洗う機械。右端にぶら下げられた白っぽい反物がわずかに見えるが、これが順に奥に向かっていくつかのローラーで送られつつ、シャワーの水がかけられては水槽の中をゆっくり通過して行く。これと構造がほとんど同じで、密閉した箱の中に水の代わりに揮発系の溶剤が容れられたロー・ゴム・オール用の機械がある。
図5は水元が終わった反物を吹き抜けの高い天井からぶら下げ、自然乾燥させている。
図6は図5で乾燥された反物を湯のしにかける機械。右端の手前にぶら下げられた白っぽい反物が見えるが、これが順に下がり、蒸気が当てられる箇所で生地幅が固定されつつ、奥に向かって送られる。広幅の生地はもっと幅の大きい湯のし機械のある工場に持参する。




(図5)屋内の干し場。



(図6)湯のしの機械。

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