『工程』トップへ



 二曲屏風『夏日』

●26 ロー・ゴム・オール

下の写真はクリックで拡大します。


(図1)湯のしが仕上がった状態。


の工程もキモノで述べたことと同じで詳述しない。乳布をつけたままに蒸し工場に持参 し、ローとゴム糸目を落としてもらう。ゴム糸目とローを併用した場合は、まずローや糸 目を除去してから蒸しをかける。糸目だけの場合はこの反対に蒸しが最初に行なわれる。 ローのみであれば、蒸しは後だ。蒸しと揮発水洗のどちらを先に行なっても仕上がりの効 果は変わらない。また、ローや糸目を落として蒸しをした後に水元もしてもらえるが、キ モノの反物の場合は機械処理することもあって、水元は充分でない場合が多い。そのため もあって自分で糊を落とす工程時に充分に水洗いしておく。蒸し工場においてこの最終段 階の水元があまりしっかりと行なわれないのは、染めた色がかなり濃い場合、生地を一旦 染料定着液に浸し、そのことで水元で色が他の部分に移り染まる危険を回避しているため 、水元が不要と思われがちなことによる。糊がまだついている状態で色が別の場所に染み ついてもそれはまだ抜染が比較的簡単だが、糸目も落としてすっかり完成している状態で 、色が流れて別の場所に付着すればもうどうすることも出来ない。こうした賠償問題がい つ生じかねない危険にいつも晒されている蒸し工場としては、色移りの最大の原因である 水元をなるべく行なわない方が無難だ。そのために脱ローや脱糸目と同時に当然実施すべ き水元が染料定着液に浸されるだけで充分に行なわれない場合がしばしばある。これはな ぜわかるかと言えば、筆者はごく微細な箇所に抜染糊を施し、この最後のロー・ゴム・オ ールの蒸しの段階で色抜きを一緒に行なうことがあるからだが、色は抜けても糊がそのま ま付着して仕上がることがよくある。つまり、水元がされていないのだ。こうなると、そ の糊を自分で部分的な水洗いで除去することになるが、せっかく湯のしが終わっているの に、また生地が部分的に縮むことになったりして、もう一度工場に持参する必要も生じる 。そのため、最後のゴム・オール依頼時は、特別に水元をしっかりとやってもらうことを 伝えない限り、糊は落ちない可能性があることを念頭に置く。工場のゴム・オールにおい ていつも水元が不充分であるとは限らないが、人任せにすることで自分の思うような仕事 に仕上がらない危険性が常にあることを考えておいた方がよい。
 広幅生地の湯のしは通常はキモノの反物を専門に扱っている蒸し工場ではやってもらえ ない。そのため湯のしだけは別の工場に持参しなければならないことがある。ところがそ うした特別の依頼は、あくまで別件の臨時仕事であるのですぐにはやってもらえないこと が多い。ある程度広幅生地の湯のしがたまらない限り、湯のしの機械を動かすことが出来 ないことも原因としてあるし、広幅といっても寸法がまちまちで、そのたびに機械の幅を 調節することは出来ないからでもある。そのため最低でも丸1日を要するから持参した翌 日かその次の日に取りに行くことになる。乳布を外した状態で持参するが、湯のしが終わ った生地を巻くための長い芯やそれを包み込む袋なども必要で、仕上がった生地を汚さず 、皺をつけずに持ち帰る工夫がいる。また、湯のし工場において機械に通す時に油が誤っ て付着することもたまにある。こうなれば自分では直しようがないので地直し屋に運ぶが 、このようなとんでもない危険が最終段階の仕上がりにも待ち受けているので気を許すこ とは出来ない。筆者は西陣のあるネクタイ整理工場で広幅生地を湯のししてもらっている が、普段の仕事の合間を縫ってやってもらえるため、湯のし上がった生地の裏表ともに無 数の糸の小片が付着する。これを帰宅後、全部ていねいにピンセットなどで取り除き、す っかり元の生地のようなゴミの付着がない状態にして表具屋に持参する。そしてその前に 初めて生地の中央から鋏で切断し、完成した屏風のように2枚に分かれた生地を横に並べ てみる。もしこの時に中央の蝶番い部分で色が合わないことがあったりすれば、部分的な 地直しをして色合わせをする。


  21,彩色
  22,ロ−堰出し
  23,墨流し染め
  24,ロー吹雪
  25,ロー吹雪部の彩色
     27,表具   1,受注
  2,写生
  3,小下絵
  4,下絵
  5,白生地の用意
  6,青花写し
  7,糸目
  8,地入れ
  9,色糊置き
  10,糊伏せ
  11,豆汁地入れ
  12,引染め
  13,蒸し
  14,水元
  15,糊堰出し
  16,糊堰出し部の引染め
  17,糊堰出し部の彩色
  18,再蒸し、水元
  19,乾燥
  20,糊抜染
  
最上部へ
前ページへ
次ページへ
 
『序』へ
『個展』へ
『キモノ』へ
『屏風』へ
『小品』へ
『工程』へ
『雑感』 へ
『隣区』へ
ホームページへ
マウスで触れていると自動で上にスクロールします。
マウスで触れていると自動で下にスクロールします。