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こ
こで説明している振袖ではロ−吹雪を施した面に胡粉を引くが、当然どのような色を引
いてもかまわない。しかし、近寄って眺めた時に濃淡の吹雪模様に見えるという効果を期
待して、たいていは地色と同じ系統に色を重ねて使用する。それはまた最初に引いた地色
にムラが生じた場合の難隠しにも最適という理由も少なからずある。染め難が出た時には
、手の混んだ仕事を加えることでそれをそうとは見せずにあたかも豪華な仕事と思わせる
という考えだが、その意味で吹雪など使用せずにすっきりとムラなく1色で引染めされて
いるものこそ技術の冴えがあるという見方もできる。それはさておき、ある一定の堰出し
した区域にロ−吹雪と染めを交互に繰り返し、染めるたびに異なった色を使うと、予想外
の複雑な染めの効果が得られる。この場合、何度かロー吹雪を全体に撒くから生地は次第
にローで厚くなり、また染めるべき地の部分も吹雪の粒で埋まって減少して行くが、染め
る色は徐々に濃く、また別系統の色を使う方が効果が出る。というのは、一度のロー吹雪
でも粒の温度がさまざまであり、その防染効果には差があるので、1色を引いてもそれは
結果的にはその色の濃淡となって地染めが仕上がるからだ。ロー吹雪を重ねるたびに厚く
なった生地は、柔軟性の高いマイクロワックスを半分程度混ぜてはいても非常にポキリと
折れやすく、そうなった箇所は筋が出来たように染まるので、ロー吹雪を施した生地を大
張り伸子や張り木に張る際には扱いに気をつける。ロー吹雪と引染めを繰り返す間は、当
然のことながら染料の定着のために蒸しにかける必要はない。またロー吹雪は比較的広い
箇所だけではなく、小さな彩色文様の内部にアクセント的に使用するのもよい。生地にロ
−を置けば、もはやその部分は電熱器で炙れないが、小さな面積にロ−吹雪をした場合は
、文様周囲にロ−を置いて堰出しせずとも泣き止め剤を加えてそのまま電熱器の温度を要
せずして彩色できることが多い。吹雪を施し終えた生地は大張りや張り木に取りつけて、
引染めの時と同じように小張り伸子を張り、胡粉を刷毛で挿して行くが、この時、このカ
ゼインや胡粉の濃度が問題だ。というのは、電熱器で炙りながらの胡粉彩色とは違って、
挿した後は染料で染めたのと同じで、蒸しにかけるまで生地に完全に固着しないからだ。
それに広い面を染めると濃くなりやすいので、そうしたことを考えて胡粉の濃度を決める
が、どういうように仕上がるかかなり一発勝負的なところがある。胡粉は多めに作ること
にするが、使用中に刷毛や筆が生地上のロ−の粒を拾って容器に混入させることもあって
、あまっても再利用はできない。それは、胡粉液内には使用直前にごく少量の抜染剤のロ
ンガリットを溶かし込むことも理由としてある。これは前述したように、水元でわずかに
染まった紫色を胡粉を引くと同時に抜くためで、そうして抜染剤を混入した胡粉は乾燥し
てももはや再使用はできない。胡粉を引き終わった翌日には蒸しをし、このことで本来染
まってはならない生地白上のうすい色や、糊伏せした際に出来た糊焼けのうっすらとした
黄ばみも抜ける。もちろんロ−吹雪の粒で防染された箇所は抜けず、全体として見れば堰
出しした面積の半分程度に胡粉が付着した格好になるが、かえって真っ白に仕上がった胡
粉と厳密にはごくうすく色が染まった生地白部分とが細かい粒子として同居して好対照を
成し、吹雪の状態が立体的に浮き上がって見える。堰出しのために糸目際ぴったりに置い
たローのうえには胡粉も含めて刷毛や筆の染料が極力つかないようにする。もし彩色時に
伏せたローのうえにはみ出た場合はすぐに雑巾やティッシュなどで拭き取っておく。拭き
取らずに乾燥すると、伏せたロ−伏せの厚さにもよるが、ロ−を除去した後も生地上にか
すかな斑点となって跡が残る。この点が糊伏せとは異なって不便と言える。
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16,水元
17,彩色(胡粉)
18,彩色(淡色)
19,彩色(濃色)
20,再蒸し
21,ロ−伏せ
22,ロ−吹雪
24,ロー・ゴム・オール
25,湯のし、地直し
26,金加工
27,紋洗い、紋上絵
28,上げ絵羽
29,本仕立て、納品
1,受注、面談、採寸
2,小下絵
3,下絵
4,下絵完成
5,白生地の用意
6,墨打ち、紋糊
7,青花写し(下絵羽)
8,糸目
9,地入れ
10,糊伏せ
11,糊伏せの乾燥
12,豆汁地入れ
13,引染め
14,再引染め
15,蒸し
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