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 本振袖『四君子文』

●4 下絵完成
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(図1)鉛筆で描き終えた原寸大の
下絵を床に並べた状態。


絵が完成すればそれを衣桁にかけたキモノの形に並べて全体を眺める。この時点で気に 入らない点があれば部分的に描き直す。また、前述したように、下絵用紙をあたかも完成 した布地に見立てて着用者と同じような背丈の人物にまとってもらえるならばなおのこと よい。下絵を描いている時はキモノの裾部が最も目に近い位置にあるが、着用された姿を 眺める時には逆に裾部は見下ろすことになるから、そのことを予め考慮して描いてはいて も、実際に下絵を着用時と同じように立てた状態でやや離れて見ると、また印象は異なる 。これは裾だけが問題ではなく、胸や肩における文様の中心位置が適当かどうか、肩から 袖へとつながる文様の流れ具合がおかしくないかどうか、さらには襟の柄つけがまずいこ とで着用者の顔映りを殺さないかどうか、あるいは臀部に柄の妙なポイントがあって後ろ 姿を台無しにしていないかどうかなど、とにかくあらゆる角度から見て効果があるような 模様配置の微調整をこの段階で済ましておく。これ以降はもう模様の位置の変更はほとん ど不可能となるからだ。絵羽模様のキモノは衣桁にかけて一幅の絵画のように鑑賞する効 果を存分に狙えるものである点が大きな特徴だが、これが実際に身に纏われると、帯で上 下に分断され、しかも前面と背面に別れもするから、人の目は各部分に行くことになる。 つまり、キモノは全体としての絵の効果と各部分の独立した細部の美しさという二面性を 常に意識して絵模様を配置する必要がある。これはある程度は六曲屏風といった表現と近 い絵の構成力を要する。各部分がそれなりに独立してその場を際立たせる効果を発揮しつ つ、しかもそれらの部分が集合して全く別の大胆な絵が現われるという構成を常に意識し ておかないと、総絵羽模様のキモノは作れない。これは、衣桁にかけた時は絵画鑑賞的な 遠い眼差し、着用された時にはごく近くからの緻密な仕事への注視という二重の視点を意 識することでもあって、大胆さと繊細さの双方を兼ね備えたような表現を友禅ができるこ との証でもある。


  1,受注、面談、採寸
  2,小下絵
  3,下絵
  5,白生地の用意
  6,墨打ち、紋糊
  7,青花写し(下絵羽)
  8,糸目
  9,地入れ
  10,糊伏せ
  11,糊伏せの乾燥
  12,豆汁地入れ
  13,引染め
  14,再引染め
  15,蒸し
  16,水元
  17,彩色(胡粉)
  18,彩色(淡色)
  19,彩色(濃色)
  20,再蒸し
  21,ロ−伏せ
  22,ロ−吹雪
  23,地の彩色
  24,ロー・ゴム・オール
  25,湯のし、地直し
  26,金加工
  27,紋洗い、紋上絵
  28,上げ絵羽
  29,本仕立て、納品
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